本レポートは、2021年10月に内容を更新しています。
大ちゃん先生こと、高橋 大貴です。
相続税という制度はすべての国にあるわけではありません。相続税という制度がある国もあれば、ない国もあります。日本では、日露戦争の戦費をまかなうため 明治38年(1905年)に相続税は創設されました。今から100年以上前のことです。
同じ相続税がある国でも、相続税の計算のやり方は国によって全く異なります。日本は全世界でも例を見ない、とても特殊な相続税の計算をします。私もセミナーで毎回 説明をしていますが、何度 説明しても なんてわかりにくいのだと辟易するほど、複雑な計算式です。相続税を考えるにあたり、一般の方がこの計算式を丸暗記する必要はありません。しかし「基本」は理解しておく必要があります。この日本の相続税の「基本」を理解していないがゆえに、相続税を多く払ってしまうケースが後を絶たないからです。
【 日本の相続税の計算はややこしい 】
日本の相続税の計算は、とても複雑です。
例えば、「遺産がいくらあった」という情報だけでは、相続税を計算することはできません。同じく、「遺産をいくらもらった」という情報だけでも、計算することはできません。そう単純ではないのです。
例えば、亡くなった方の遺産が1億円とします。この1億円を1人が相続する場合と、2人が5000万円ずつ相続する場合とでは、相続税の金額が変わってきます。
同じく、5000万円の遺産を受け取ったとします。この5000万円が、遺産1億円のうちの5000万円だった場合と、遺産5000万円のすべてだった場合とでは、相続税の金額が変わってくるのです。
日本の相続税は、「遺産の相続」「法定相続人の数と続柄」「それぞれがいくらずつ相続するか」など、様々な情報を集めないと計算できない、複雑な制度であることをまず理解しましょう。「贈与税」のように、基礎控除を引いた金額を早見表に当てはめる・・・だけでは計算できない複雑な税金なのです。
【 ちょっと待って!! 配偶者がすべて相続していいの? 】
配偶者がすべて相続するというケースが、大変多くみられます。
配偶者の場合は、遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、1億6千万円もしくは配偶者の法定相続分相当額までであれば、相続税はかかりません。これを「配偶者の相続税額の税額控除」といいますが、この制度を安易に利用しているケースが多いのです。
恐いのは「二次相続税」です。例えばお父さんが亡くなった場合に、お母さんがすべて財産を相続し、上記の制度を利用して相続税がゼロになったとします。しかし、状況によってはお母さんが亡くなった時の相続税(二次相続税)が大幅に上がってしまい、大変なことになるというケースが多々あります。お母さんが亡くなった時には、もう「配偶者の相続税の税額控除」は使うことができないためです。
一次相続の際にこの「配偶者の相続税の税額控除」を安易に使うべきではないということを説明するため、下に「例」を一つ上げます。相続税がかかる資産をお持ちの方は、なぜこのような差がでるのか 相続税の基本を よくよく勉強しておくべきです。
【例】
夫A 財産 6000万円 妻B 財産 4000万円
子2人 C・D とします
パターン①
夫Aが亡くなった際に、妻Bが6000万円すべて相続 = 一次相続税「ゼロ」
↓
妻の財産が4000万円+6000万円=1億円に
↓
妻Bが亡くなった際に、子C・Dが1億円を半分ずつ相続 = 二次相続税「770万円」
↓
一次相続税 ゼロ+二次相続税 770万円 =「770万円」 (妻B 子C 子D の合計)
パターン②
夫Aが亡くなった際に、妻Bは相続しない
子C・Dが6000万円を半分ずつ相続 = 一次相続税 「120万円」
↓
妻の財産は4000万円のまま
↓
妻Bが亡くなった際に、子C・Dが4000万円を半分ずつ相続 = 二次相続税「ゼロ」
↓
一次相続税 120万円+二次相続税 ゼロ =「120万円」 (妻B 子C 子D の合計)
【 引き継ぎ方で、相続税はこんなに違う! 】
上記の例でいうと、同じ財産であるにもかかわらず、「お母さん経由で子に引き継いでいくか」「夫婦ともに子どもに引き継いでいくか」で、なんと「6倍以上」税金が違うことがわかります。こんなにも差が出るのです。日本の相続税の複雑さがお分かりになったでしょうか?
今回のこのコラムを読んで不安になった方は、できるだけ早く「相続税の試算」を行ってみてください。上記はあくまで、ご家族4人で ご夫婦の財産が合計1億円だった場合の金額になります。それぞれの家庭の事情や家族の数、資産の状況によって全く試算結果が変わってきます。まずは「自身の状況の分析」から始められることが大切です。
また、もう一つ大事なのは「相続税に詳しい専門家」に相談をすることです。皆さまが気付いていないだけで、実は税理士以外の専門家も同時に必要となるケースが多くあります。当社では、お客様の状況に応じて相続に強い専門家(税理士・弁護士・司法書士等)でチームを組んで支援にあたっています。お必要な際は、いつでも当社にご相談ください。